第 1 章  うさぎの穴をまっさかさま

アリスは川辺でおねえさんのよこにすわって、なんにもすることがないのでとても 退屈(たいくつ)しはじめていました。一、二回はおねえさんの読んでいる本をのぞ いてみたけれど、そこには絵も会話もないのです。  そこへいきなり、ピンクの目 をした白うさぎが近くを走ってきたのです。
 それだけなら、そんなにめずらしいことでもありませんでした。さらにアリスとし ては、そのうさぎが「どうしよう! どうしよう! ちこくしちゃうぞ!」とつぶやくのを 聞いたときも、それがそんなにへんてこだとは思いませんでした(あとから考えて みたら、これも不思議に思うべきだったのですけれど、でもこのときには、それが ごく自然なことに思えたのです)。
 でもそのうさぎがほんとうに、チョッキのポケットから懐中時計(かいちゅうどけい)をとりだしてそれをながめ、そしてまたあわててかけだしたとき、アリスもとび あがりました。というのも、チョッキのポケットなんかがあるうさぎはこれまで見た ことがないし、そこからとりだす時計をもっているうさぎなんかも見たことないぞ、 というのに急に気がついたからです。